人生はよく旅に喩えられます。旅が楽しいのは、終わったあと帰るべき家があり、迎えてくれる家族があるからです。人生の旅も、終わったあとに帰るべきところがあります。念仏者はこの世の縁が尽きて往きつくところは、お浄土です。人生の旅が終わったあと、帰るところを知らないのは、漂流と同じと言わねばなりません。
他力とは、他人の力をいうのではありません。他力とは仏さまの願いのはたらきのことです。私たちは常に自己中心の考えに立ち、お互いを傷つけ合っています。その原因は真理に暗いこと(無明)にあります。そんな私たちを憐み、常に寄り添い、支えてくださっているのが仏さまです。
仏さまの願いを聞いて、与えられたいのちを力一杯生き抜きましょう。
「ナモアミダブツ」は阿弥陀如来の喚び声です。「必ずすくう、われにまかせよ」と私を喚び続けておられる喚び声なのです。その喚び声に気づいた私が、お礼の意味で「ナモアミダブツ」と返します。それが称名念仏です。
僧侶は職業というより、一つの生き方なのです。ただ寺に住んでいるだけではダメです。僧侶としての生き方を通して、他の人々に示唆を与える、そんな生き方が大切だと思っています。人間は、自分の力で生きているのではなく、仏の願いに生かされているのです。